発達検査
発達検査とは?
こどもの運動や言葉の発達具合を確認するために行われる検査です。
検査といいますが、血液検査とは異なり針を刺したりこどもが嫌がったりするような検査ではありません。
問診や体の動き、積み木や鉛筆など身近なものを使用してこどもに無理なく行います。
検査の目的は、お子さんの発達状況やその特徴を把握して、その子の理解をお母さん、お父さんや周りの支援する方々に深めてもらうことです。
加えて、実際の年齢(暦年齢といいます)と比較して発達指数を出すことが可能な検査もあります。
これは、特別児童扶養手当や療育手帳の申請・取得する際に利用されています。
発達検査の種類
発達検査には様々な種類があります。
発達のどのような面を評価したいかを考えて選択します。
聞き取りだけの発達検査は、特別な設備や用具を必要とせず、簡単に行えることがメリットです。
そのうち、よく用いられる検査を紹介します。
①遠城寺式乳幼児分析的発達検査
検査の課題は、運動面(移動運動、手の運動)、社会性(基本的習慣、対人関係)、言語面(発語、言語理解)の3つに分かれています。
乳児期は1ヵ月毎に、それ以降は2~4ヵ月毎に発達課題が設定されています。
各発達分野の検査結果をグラフ記入欄に印をつけ、暦年齢の線にもこどもの年齢に点をうち、これらの点を結んだもの線がその子の発達グラフとして視覚的に確認できます。
通常、暦年齢から3~4段階下回ったときに、発達の遅れがあると判断します。
例えば、言語理解の遅れがなく発語の領域のみが暦年齢より3つ下回っている場合、表出性優位の言語発達の遅れがあると説明します。
例えば自閉スペクトラム症を有するこどもたちでは、言語だけでなく社会性も遅れていることが多いのが特徴です。
また遠城寺式では発達領域毎に発達指数(DQともいいます)として計算が可能であり、(発達年齢÷暦年齢)×100の式で算出します。
例えば、暦年齢が3歳、移動運動と手の運動が3歳、基本的習慣、対人関係が2歳、発語、言語理解が1歳半で評価されると、運動領域ではDQ100 、社会性ではDQ67、言語ではDQ50となります。
低年齢で知能検査ができない場合などこと数値を用いて公的な書類を作成することもあります。
②デンバー発達判定法(DENVER Ⅱ)
このスクリーニング検査では、発達を「個人-社会」、「微細運動-適応」、「言語」、「粗大運動」の4分野に分類して評価します。
それぞれの行動について25%~90%の達成率を示す標準枠を階段状に図示しているのが特徴的です。
標準枠のなかで色付けされている部分は、75~90%の達成率を表しており、この標準枠と実際の年齢線を比較しながら、同年齢のこどもと同様の発達段階にあるかどうかを判定します。
この検査は、最初に発達相談を行う健診・保健センターで行われる場合もあります。
年齢線が標準枠を通過している場合を合格、標準枠を通過していない場合を不合格とし、合格の場合はP、不合格の場合はF、その項目をしたことがない場合はNO、拒否の場合はRと記入します。
要注意の項目は、標準枠の右側にCと書くことで表示します。
遅れがひとつもなく、要注意(C)が1項目以下である場合は「正常」とし、2つ以上のCがある場合、および/または1つ以上の遅れがある場合は、「疑い」とし、1~2週間後に再判定を行うことが推奨されます。
また、標準枠が年齢線より完全に左側にある項目、あるいは75%から90%の間に年齢線がある項目のうち1つ以上拒否がある場合、「判定不能」とします。
「疑い」や「判定不能」の場合には、専門機関への紹介されることが推奨されます。
なお、この検査では遠城寺式のように発達指数を算出することはできません。
③新版K式発達検査2020
新版K式発達検査2001が2020年版に改定されました。改定内容は、乳幼児用検査項目の追加と整理、成人用検査項目の新設などです。
この検査では、姿勢・運動(P-M)領域が発達年齢で101日から52カ月(つまり4歳4か月)まで、認知・適応(C-A)領域が発達年齢で101日から381カ月(31歳9か月)まで、言語・社会(L-S)領域が発達年齢で109日から340カ月(28歳4か月)まで、全体を総合した全(T)領域が発達年齢で100日から355カ月(29歳7か月)まで判定できるのが特徴です。
この検査では、できるものは(+)、できないものは(-)で表示されます。
また検査に反応しなかった場合は、NRと表記されます。
このほか、聴取により判定した項目はR(reportの略)がつけられ、推定により判定した項目はMB(may beの略)、制限時間を超えた時はOT(over timeの略)と付記されることもあります。
検査が終了した後、できた項目とできなかった項目の境目を1本の線でつないでいき、遠城寺式と同様に発達を視覚的に確認することができます。
また各領域の得点から換算表を用いて発達指数を求めることが可能です。
この検査では、年齢により標準偏差が異なっており、10歳以下の場合はDQ80以下が遅滞の判断の基準となります。
10歳以上の場合、標準偏差が15~22と大きくなるため、DQ70を下回った場合には知能検査を依頼し、併せて評価することが必要です。
④乳幼児精神発達診断法(津守・稲毛式)
この検査では、全て日常生活場面でのこどもの様子について、質問による聞き取りのため、検査が困難な児についても発達診断をすることが可能です。
運動、探索・操作、社会性、食事・排泄・生活習慣、理解・言語の5つの領域を軸としており、発達輪郭表を作成し、どの領域が遅れているのかを視覚的に知ることができる。
質問項目に対して、確実にできるものは○、できないものや未経験というものは×、この数日できるようになったものは△で表されている。
○を1点、△を0.5点へ換算し、各領域で得点を算出し、換算表を用いて発達年齢を求めます。
ただ1961年に作成されたものであり、質問項目はやや現在の生活と異なるところはあり注意が必要です。
⑤KIDS乳幼児発達スケール
KIDS(Kinder Infant Development Scale)の略で、1989年に日本で標準化された検査です。
乳幼児精神発達診断法と同様に、日頃の行動を良く観察している人に記入してもらう質問紙方式で、項目数は約130項目あり○×で回答していきます。
質問領域は、運動、操作、言語理解、言語表出、概念、対こども社会性、対成人社会性、しつけ、食事の9種類に分かれています。
検査用紙は、タイプA(0歳1カ月~0歳11カ月)、タイプB(1歳0カ月~2歳11カ月)、タイプC(3歳0カ月~6歳11カ月)、タイプT(0歳~6歳)の4種類に分かれており、タイプTは発達の遅れがみられるこどもによく用いられます。
全ての質問に答えてもらうが原則ですが、×が5つ続いたときには検査終了とし、○のみ1点と計算し、全ての領域の合計得点を用いて、換算表から総合発達年齢を求め、発達指数を算出することが可能です。
参考文献
- 1)遠城寺宗徳.遠城寺式乳幼児分析的発達検査法 九州大学小児科改訂新装版.慶応義塾大学出版会.
- 2)中瀬惇.新版K式発達検査にもとづく発達研究の方法.操作的定義による発達測定.ナカニシヤ出版.
- 3)津守真、稲毛教子.増補 乳幼児精神発達診断法 0~3才まで.大日本図書.
- 4)津守真、稲毛教子.乳幼児精神発達診断法 3~7才まで.大日本図書.
- 5)社団法人日本小児保健協会(原著W.K.Frankenburg).DENVERⅡ-デンバー発達検査法-.日本小児医事出版社.