発達性協調運動症とは?
DCDの原因や診断方法を解説
発達性協調運動症とは
発達性協調運動症、または発達性協調運動症(Developmental Coordination Disorder; DCD)は、DSM-5のなかでチック症・トゥレット症や常同運動症と同じ運動症群に含まれています。
いわゆる「不器用」のことであり、人口の5~6%程と報告されています。
最初の医学論文の報告としては、1937年のOrtonによって“significance of clumsiness”と表現されていました。
その後も種々の名称で表現されてきましたが、1994年にロンドンの国際会議でのコンセンサスとしてまとめられ、現在に至っています。
しかし、診断する役割の医師はこの発達性協調運動症の概念を知らないことが多く、「不器用だから」ということで周囲の大人が気づかないうちにこども自身が深く悩んでいるケースもみられます。
たとえば、次のような例です。
“9歳の男の子、靴をはくのも困難で、母は食べ物を切ってあげたり、髪をあらってあげたりする必要がある。
ひとりでこれらをこなすことが難しいからである。
自転車の乗り方も習得できない、公園に友達といくことができない。
チームスポーツをしようと試みるが、ミスをするのでパスをもらえない。
これにより彼は、疎外感や劣等感を感じるようになり、以後参加しないようになった。
両親は彼が孤立してひきこもるのではないかと心配している。
学校の先生からは性格は明るくてよいが、字を書くことがゆっくりであり、下手である。
宿題もこなせないことも多くなり、進級も懸念されている。
両親が次第に関わらざるを得なくなっている・・・”
発達性協調運動症の原因
それでは、発達性協調運動症の原因は何でしょうか。
脳のCTやMRI写真をみても大きな異常はないのですが、早産のこども達に多いとの報告があります。
このことから、明らかな脳性麻痺までには至らないものの脳内に微小な神経障害があり、「不器用さ」と関連しているのではないかという意見があります。
また運動を滑らかに行う調整を行っている小脳が「不器用さ」の原因にかかわっているのではないかとも考えられています。
そのほか、約半数がADHD(注意欠如・多動症または注意欠如・多動性障害)の診断基準に合致するとの報告や、学習障害と合併しやすいとの報告もあります。
発達性協調運動症の症状・特徴
発達性協調運動症の具体的な症状・特徴は下記の通りです。
- 幼少期の運動発達の遅れ(はいはい、歩行開始の遅れ)
- ふらふら歩く、すぐ転んでしまう
- 体が柔らかく姿勢が崩れやすい
- スポーツが苦手
- よく物を落とす
- 箸やはさみが使えない
- 書字が苦手・汚い
- 発音が苦手 など
このように運動の協調が必要とされる活動がきっかけで、日常活動や学校生活に支障が生じているのかどうかを確認することが必要です。
そのため、医師や理学療法士や作業療法士といった専門職だけでなく、学校の先生など複数の意見を聞くことが必要です。
なお、もう既に脳性麻痺や筋ジストロフィーなどの筋肉の病気など身体的な疾患の診断を受けているお子さんでは、この発達性協調運動症という診断を付加することはありません。
地域によっては5歳時健診のなかで、以下の項目を利用して発達性協調運動症に関するスクリーニングを行っていることもあります。
これらは、神経学的微細兆候Soft neurological signsと呼ばれています。
発達性協調運動症に関するスクリーニング
- ①開口手伸展現象 上肢を前ならえのように伸ばし、手首だけを脱力させた状態で、開口・閉眼・舌出しの動作を同時にしてもらい、指や手首の伸展動作のような動きがあるかどうかを確認。8歳以上でみられるときには注意。
- ②前腕回内・回外運動 8歳では肘を動かさなくても可能になります。9歳以降では注意。
- ③指鼻試験 5歳以降では眼を閉じても可能になります。6歳以降で開眼でないとできないと注意。
- ④指対立試験 9歳以降に対立運動や指から指への移行が円滑でないと注意(反対の手も一緒に動くことは10歳くらいまでは認められる)。
- ⑤閉眼起立、立位での安定性 閉眼立位で7歳以上は安定している。側部から押してもすぐに体の揺れのみでもどる。
- ⑥片足立ち・片足跳び 7歳以上で20秒以上は片足立ちが可能。けんけんは、得意な足で、5歳で10回、6歳で12回、7歳以上では20回以上が可能。
- ⑦直線歩行 7歳以上は継足で20歩可能。9歳以降は、直線からそれることはなくなってくる。
発達性協調運動症のこどもとの向き合い方
それでは、どのようなことに注意して向き合っていけばよいのでしょうか。
以前は、運動の困難さは成人にむけて改善していくため介入不要とも考えられていましたが、様々な研究により思春期や成人期まで継続していることが分かりました。
また感情面、肥満などの健康面でのリスク因子になっていることも判明し、ヨーロッパでのガイドラインでは、発達性協調運動症と診断されたこども全てに介入することが推奨されています。
医師、作業療法士や理学療法士などの専門職により両親や教師が「不器用な」こども達にポジティブなサポート役をできるように働きかけること、こどもに対しては成長した際に、苦手なことを補完するような対策を提案し利用できるようにしていくことが挙げられます。
3~4歳児での積極的(予防的)な介入は推奨されておらず、5歳までは3カ月以上の期間を空けて発達状況の繰り返し評価をしていき、5歳以降は課題(認知)志向型の介入を勧めていくことが推奨されています。
具体的な事例として、日本では多辺田らがまとめた「しまはちチャレンジグループ」の試みが報告されています(作業療法 2015年)。
ぜひ一度読んでみてください。
【報告書】自閉症スペクトラム障害の不器用さに対する認知指向型・家族参加型グループリハビリテーションの試み(PDF:1.78MB)
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よくある質問
- 何歳ごろから、発達性協調運動症(DCD)を疑ったほうがよいですか?
- 発達性協調運動症(DCD)は3~5歳ごろに気づかれることが多く、乳幼児期には「はいはい・歩行の遅れ」「転びやすい」「物を落としやすい」などがサインになります。
特に5歳を過ぎても運動の苦手さが続き、日常生活や園・学校で困りごとが多い場合は、受診を考える目安になります。早めの相談により、必要な支援を適切な時期に始めることができます。 - 検査・診断にはどのようなステップがありますか?受診すべきタイミングは?
- 診断は、小児神経専門医・作業療法士(OT)・理学療法士(PT)など複数の視点で行われます。問診、運動発達の評価、日常生活動作の観察を行い、神経学的検査を行うことで脳性まひや筋疾患など他の病気がないかを確認します。
「転びやすさが長く続く」「園や学校で繰り返し指摘される」といった場合は、小児神経専門医の受診を検討するとよいでしょう。 - 保険適用の治療や支援はありますか?費用はどれくらいですか?
-
発達性協調運動症(DCD)に対するお薬はありませんが、日常生活動作向上のため作業療法・理学療法は保険適用で受けることが可能です。診察のための予約料、園・学校向けの診断書や意見書発行は保険適用外(自費扱い)になることが多いため、医療機関の種類や診療内容によって費用が異なる場合があります。受診を希望される場合は料金を事前に確認しておくと安心です。
自治体の発達相談や児童発達支援を併用するケースも多く、家庭の負担を抑えながら支援を受けることができます。 - 家庭でできる「遊びを通じた運動支援」はありますか?
- 家庭では無理なく取り組める遊びが効果的です。バランス遊び、風船やボール遊び、折り紙・粘土などの細かな手作業、音楽に合わせて体を動かす活動などがおすすめです。
また、こどもの神経発達症状に理解のあるセラピストといっしょに定期的に行うとより効果的です。楽しさを感じながら繰り返すことで、協調運動の向上だけでなく感情面での安定や自己肯定感の向上にもつながります。 - 発達性協調運動症(DCD)の子どもを学校で支援するには、どんな配慮が必要ですか?
- 学校ではまだDCDについて知られていないことが多く、幼少期からの発達状況と現在の症状の具体的な説明が必要です。症状が重い場合にはクラスメイトにも事前に説明することが必要です。また、以下のような具体的な教育相談が役立ちます。
例:マス目の大きいノートへの変更、使いやすい筆記具やタブレット・PC端末の使用、筆記時間の延長や宿題量の調整、実習・実験などグループワークでの配慮、体育での段階的な練習、いじめやからかいの防止。
以上の取り組みを行うことで、DCDのこどもたちの日常生活の負担が減り、学習や対人関係にも前向きに取り組みやすくなります。

















