発達障害
発達障害の定義
発達障害は、2005年4月に施行された発達障害者支援法のなかで、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。
知的障害者福祉法や身体障害者福祉法のように、発達障害の支援に特化した法律はありませんでした。
この法律によって発達障害が社会全体のなかで位置づけられ、こどもから大人まで一貫した支援を促すことが示されたことはとても大きな一歩でした。
発達障害児の早期発見・早期支援、教育・就労支援、生活・家族支援についても、この法律のなかで国および地方公共団体の責務であると明示されており、現在進行形で各自治体のなかで進められています。
幼少期の特徴
発達障害を有するこども達の幼少期の特徴として、視線が合わず笑わなかったり、環境の変化に過敏だったり、特有の育てにくさや、お父さんお母さんとの愛着形成の難しさがあります。
特に男の子の場合にはお母さんが子育てで悩む場合が多く、親子ともに心身の健康を害する可能性があります。
幼いときにははっきりとした診断をつけることが難しいこともあり、まずは保健センター等で主催される親子遊びを通じて、親子関係やコミュニケーション能力を育むことをしながら関わっていく場合もあります。
このような時期は、お父さんお母さんにとっても先行きが分からず不安が強くなりやすく、落ち着いてこどもと関われない・遊べない方もいます。
こども達への関わり方
発達障害のこども達への声掛けや関わり方には一定のコツが必要です。
支援者はそのコツを知っており、いっしょに遊びながらそのコツを示してくれます。
そして、お父さんお母さんがひとりで悩むことがないように、支援者は日々の悩みを共有し、その不安を軽減させてくれます。
お子さんが発達障害かなと思った場合にはぜひ一度相談してみましょう。
多動傾向のこども達の特徴
もうひとつ家庭内で気を付ける必要があるのは、落ち着きがなく、多動傾向のこども達の場合です。
多動傾向のこども達では、幼少期は注意が散漫であり、日常生活での怪我や事故に十分に気を付ける必要があります。
また良い生活習慣が身に付きにくいため、日々の生活の中で周囲の大人から叱責されることが多くなります。
お父さんお母さん自身も周囲から「しつけが悪い」などと非難されることもあり、より厳しい「しつけ」となって親子関係が悪循環に陥ります。
これは、決してこどもが努力不足でもなくお父さんお母さんのせいでもありません。
こどもに合わせた環境づくりや、こどもへの理解・接し方の工夫をすることで過ごしやすくなります。
また、症状が軽いこども達は落ち着いた家庭ではあまり目立たないものの、保育園や幼稚園の集団生活に入ると、かんしゃく・暴力、落ち着きのなさ、集団行動ができないといった「問題」をはじめて指摘されるようになり、専門医療機関につながる場合もあります。
お父さんお母さんも周囲から指摘されるとショックで、すぐには事実として受け入れられないと思います。
しかし、そんなときでもこどものことを知るよい機会だと頭を切り替え、一度専門家に相談してみましょう。
発達障害の診断
発達障害の診断は、世界保健機関のICD-10や、米国精神医学会のDSM-5と呼ばれる基準を用いて医師によって行われます。
診断基準のなかには、「発達障害」という枠組みはありません。
そのお子さんの特徴によって、どの診断の枠組みに当てはまるのかを成育歴や複数の評価者で検討し、最終的に医師が診断します。
そのため、通常の小児科の外来時間のなかでは十分に発達診断を行うのは難しいのが現状です。
発達診断を希望する場合には、専門の発達クリニックや療育センターを予約し受診するとよいでしょう。
発達診断を行う意味
発達診断を行うことの意味は大きく三つです。
一つ目は、症状の理解と長期的な見通しができること、二つ目はその見通しに基づいて療育などの親子活動をはじめるきっかけになること、そして三つ目は教育・福祉面での支援が受けられるようになることです。
診断後の療育支援
診断後の具体的な療育支援としては、ことばの理解や表出が苦手な場合には、言語聴覚士による個別支援を行うことがあります。
また運動発達の遅れや手・体の使い方の不器用さが目立つ場合、感覚過敏・鈍麻など感覚面の偏りがある場合には、理学療法士・作業療法士による個別支援を利用することもあります。
これらの支援は、おおむね就学前までの期間で終了することが多いですが、お父さんお母さんにとって発達障害に関する理解を深め、こども達に向き合う姿勢・力を身につけていく良い時間になります。
また睡眠の問題があったり、不安やこだわりが強かったり、感情調節や衝動をコントロールすることができなかったりする場合には心理師による個別支援のほか、医師による服薬治療を試すこともあります。
就学前には、読み書きを含む知的能力の評価を行い、地域の教育センターで事前の就学相談を行うとよいでしょう。
小学校入学後は落ち着いている子でも注意
小学校入学後は、幼少期と異なり療育支援が手薄になる時期でもあり、一見落ち着いている子でも注意が必要です。
発達障害のこども達の不登校は稀ではなく、学習面でのつまずきや、周囲のこども達とのトラブルがきっかけでおこります。
入学後に朝起きられない、学校に行きたくない様子がみられた場合には、まずは小児科で体の変調がないかどうかまず確認しましょう。
もし、体の異常がなかった場合には学校の先生やこれまで相談してきた支援者とともに学習面や生活環境に関する見直しを行ってみましょう。
大切なことは、こどもが自尊心を保ち続けられるようにし、こども達の感情や行動にゆがみを生じさせないことです(発達障害の二次障害を防ぐともいいます)。
不登校になると学校に通うことばかり目に行きがちですが、決してあせらないでください。
学習支援以外にも、自宅での休息の取り方、余暇の過ごし方、学校以外の趣味や居場所をつくることに目を向けてもよいでしょう。
むしろ長い目でみるとストレスコーピングのスキルを高めることはとても大切です。
こどもにとって学校で過ごす時間というものは、良くも悪くも一番変化や刺激が多い時期なのです。
その点を理解しつつ、その都度、生活環境・学習環境を見直す機会にしていきましょう。
特徴を理解し、成長をじっくり待つことも大切
このようにライフステージに応じた課題をいっしょに解決しながら、発達障害のこども達は皆大きくなっていきます。
ときにはすぐには解決できずに保留にする課題や、解決をいったんあきらめるような課題もでてくるかもしれませんが、そんなときでも決してあせらないでください。
発達障害は「治す」というものではありません。
その子なりの発達の特徴を理解し、成長をじっくり待つことも大切です。
こども達は穏やかな日常生活・学校生活から、行動を学び習慣を作っていきます。
発達障害のこども達は日々生きにくさを抱えています。
日常生活のなかでの成功体験が必要です。
最初はどうしてもできないところやネガティブなところばかりが目についてしまうかもしれませんが、いっしょにしてみたり手本をみせたりと繰り返ししていきましょう。
また、その子の良いところ・強みに注目すること・強化することも忘れないでおきましょう。
お父さんお母さん自身の休息も必要
そして、お父さんお母さん自身の休息も必要です。
育児のほかに、仕事があり、家事もあり、日々忙しく疲れていると思います。
それでも、日々のリラックスタイムを意識して確保することが大切です。
また体調を崩したり頑張れなくなってしまったりしたときに頼れる人・場所をあらかじめみつけておくとよいでしょう。
身近に頼れる人がいない場合には、お住まいの役所・障害福祉担当の方、療育センターや発達クリニック、各種支援機関(下記)につながりぜひ相談してみましょう。
きっと明日へつながるヒントがもらえるはずです。
主な支援機関
- 子育て支援センター
- 保健所・保健センター
- 児童発達支援センター
- 児童相談所
- 発達障害者支援センター
- 精神保健福祉センター
- 療育センター・発達クリニック